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沢木耕太郎 『深夜特急(1)〜(6)』

IMG_2774.jpeg「ミッドナイト・エキスプレスとは、トルコの刑務所に入れられた外国人受刑者たちの間の隠語である。脱獄することを、ミッドナイト・エキスプレスに乗る、と言ったのだ」(一巻の巻頭より)。

 沢木耕太郎は、横浜国立大学経済学部卒業後、富士銀行(現在のみずほ銀行)に入行したのだが、なんと入社初日に退社してしまった。出社途中に信号待ちをしている時に退社を決めたという。

 退社の理由は、「雨が降っていたせい」というが、既存のレールに乗りたくなかったのかも知れない。「ミッドナイト・エキスプレスに乗る」……自由になりたいと思ったのだろう。

 インドのデリーからイギリスのロンドンまで、乗り合いバスで行く——。ある日、そう思った26歳の沢木は、仕事をすべて投げ出して、旅に出る。遠路2万キロの彼方のロンドンへ向けて。

「香港・マカオ」(第一巻)、「マレー半島・シンガポール」(第二巻)、「インド・ネパール」(第三巻)、「シルクロード」(第四巻)、「トルコ・ギリシャ・地中海」(第五巻)、「南ヨーロッパ・ロンドン」(第六巻)。

 この一年以上にわたる、ユーラシア放浪の記録は、バックパッカーたちの間でバイブルとなり、80年代と90年代における、若者たちの間での個人旅行流行の一翼を担った。

 マカオでは「大小(タイスウ」というサイコロ賭博に魅せられて、あわやという事態に。ペナン(マレーシア)では、娼婦の館に滞在し、女たちの屈託のない陽気さに巻き込まれたり。

 インドにたどり着いた沢木は、カルカッタの路上で物乞いに足首をつかまれ、ブッダガヤ(インドの北東部にある仏教の聖地)では最下層の子供たちと共同生活をし、カブール(アフガニスタンの首都)では、ヒッピー宿の客引きをしたり。

 ロンドンで旅の終わりを告げるのだが、日本に電報を打ちに中央郵便局へ行き、「Being on the road——」と送る。ひとつの旅の終わりは、新しい旅の始まりなのかも知れない。

 全6巻、普通では体験し得ない、貴重な体験談ばかり。26歳の沢木の血となり、肉となった大冒険。

 やがて、ノンフィクションライターとなり、『テロルの決算』(文藝春秋刊)で、第10回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞する沢木。彼の原点がここにある。

 読んだのは、高校生の時。“箱入り娘”じゃなかったら、私も旅に出ていたかも知れない。

 ぐっと話は小さくなるが、大学生のある日、地図を見ていて、国道一号線が東京から京都まで続いていることを知った私。「歩いて、京都まで行こう!」。

 夏休みにリュックを背負って、テクテクと歩き、京都に向かう。ライター見習いをしていた、編集部のホワイトボードにも、「行き先 京都」と書いて来た。

 とても暑い日で、水をがんがん飲むのだが、歩いても歩いても、すべて汗となり、トイレに行こうという気にならない。

 横浜のユースホステルで、寝る前に『二十歳の原点』(高野悦子・著/新潮文庫刊)を読み直し、自分も自殺するんじゃないかと怖くなり、家に逃げ帰る(笑)。

 この日は、記録史上、一番暑い夏だった。
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カエルのロビン

Author:カエルのロビン
フリーランスの記者&編集者。星野源と加瀬亮が好きといえばオシャレだと思っている。何歳からアラフィフか母親と協議中。数年分の旅行記と食べ歩き日記を順次アップしていきますので、よろしくお願いいたします。
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