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我が家最大のタブー!?

IMG_7509_20211108002155379.jpeg まだ妹が生きてた頃、妹の発案で、母の誕生日会を開いたことがある。

 以前、仕事で使って美味しかったという妹お薦めの赤坂の料理屋で、3人でひさびさに食事をした。

 店にはあたしが一番乗りで、次いで母、時間に細かい妹が珍しく15分遅れて到着した。

 元気を装っていても、過労と過敏性腸症候群に悩まされている妹は、40kgを割った薄い体に黒いロングドレスを纏(まと)って現れた。

 華やいだ料理屋より柳の下が似合うような白い顔をしていた。会話は弾んだような弾まないような。

 何かの話題に妹が笑っても、神経が疲れ、尖っているのがわかる。手元を見ても、あまり箸を動かしていなかった。

 食事の最後に誕生日会だからとケーキを食べようとしたら、和食屋だけに抹茶アイスや蜜豆のようなものしかなく、店を変えようかという話になった。

 店を出て少し歩き、赤坂見附の駅前のコージーコーナーに母が入ろうとすると、「さすがに赤坂まできて、コージーコーナーはないんじゃない? ちょっと歩いてみる?」と妹が気を使って言った。

「あなた、大丈夫なの?」と母が尋ねると、「今日、会社休みだったし、あたしは平気」と妹が答えた。

 ぶらぶらと3人で、TBS通りを歩いた。けれど、時間が遅いせいか適当なケーキ屋は見つからなかった。

 妹がまた、「このまま、六本木の方まで歩いちゃおうか?」と言った。

 母とあたしは顔を見合わせてから、「無理しないほうがいいんじゃない?」と返した。

 妹は「平気」と言って、歩き出した。結局、アマンドのなくなった六本木でも、深夜営業のケーキ屋は見つけられず、六本木駅近くのエクセルシオールカフェに入ることになった。

 席に座るや否や、あたしと妹はまるで示し合わせたかのようにハンカチを取り出し、ベタつく脂性のおでこや鼻をポンポンと押さえ始めた。

 その様子を見て、母は「ホントによくまぁ、二人とも、そんなにテカテカになるわね。あたしなんて、乾いてばっかりよ」と笑った。

 そこであたしは言った。「この前さぁ、脂性の謎を辿っていくと、“我が家最大のタブー”に行きつくんじゃないかって思ったんだよねぇ」。

 母も妹も、「なにそれッ?」と食いついてきた。

「お父さんと叔母さんは、二人ともすごい脂性だったでしょ。五十過ぎても吹き出物がすぐできて、ニキビ跡がボコボコしてて。鼻が大きいところなんかそっくり」とあたしは言った。

「で、あたしたち(あたしと妹)も脂性。あたしは鼻が大きいところも似てしまった」。母と妹がうんうんと頷いて、あたしは続けた。

「でも、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんは、脂性じゃなかった。ま、二人とも年とともに肌質が変わったとも考えられるけれど、ニキビ跡なんかまったくない、つるんとした肌をしてた。鼻も大きくなかったし。で、よく考えたら、あの親子(祖父母と父と叔母)の顔は……似てない!」。

 母と妹が「えっ……!?」と一瞬かたまった。「……たしかに似てないかも」と腕を組んで顔を思い出しながら慎重に答える妹。

「お祖父ちゃんとお父さんは性格は似てたけれど、顔は……そういえば似てないわね」と母。

「でしょ、でしょ!」とあたし。「で、ここでひとつの仮説に行き当たったのよ。お祖父ちゃんが戦争から帰ってきたとき、お祖母ちゃんは別の男性と暮らしてた。そのことを“裏切りだ”と孫にしつこく言うほど、お祖父ちゃんは根に持っていた。さて……これはいかに?」と名探偵のように続けた。

「お父さんの生まれは昭和17年。お祖父ちゃんがいつ出征したかはわからないけれど、出征自体は昭和16年から始まっていた……。もしかして、お父さんと叔母さんって、一緒に暮らしてた男性とお祖母ちゃんの子なんじゃない? そう、ニキビのたくさんある鼻の大きな男性」。

「エーッ!?」と店内に聞こえるほどの声を上げて、蒼くなる二人。

 その様子を見て、あたしは満足げに笑ってから、自分で二人に焚きつけた不安を吹き消した。

「あたしも、一瞬、冷やっとしたのよねぇ。でも、あんたの顔を思い出したら、ないないないって思ったのよ」。

 妹はすぐに意味がわかったらしく、ちょっと「ムッ」としてから笑い出した。母も気づいて声を上げて笑った。あたしも笑い出し、女三人で爆笑した。

 妹は生まれたときから、「お祖父ちゃんにそっくりねぇ」と周囲から言われ続けてきたのだ。  

 本人は、「似てる」と言われるたびに不本意だと言わんばかりの表情をしていたけれど。

 たとえ、祖父と父の顔が似ていなくても、祖父の血が孫である妹にしっかり受け継がれているのは明らかだった。

「一瞬これで、お祖父ちゃんがお父さんに子供の頃からつらく当たってた訳がわかった気がしたんだけどねぇ。怒ると、おまえは俺の子じゃない、なんて言ってたみたいだし」。
 
 そう言って、あたしが話を締めくくろうとすると、妹がハッとして、母に詰め寄ったのがおかしかった。

「あたし、大丈夫でしょうねッ!」。

 母とあたしがポカンとしていると、妹は芝居っ気たっぷりに母をひと睨みして言った。

「あたし、お祖父ちゃんとお母さんの子ってことはないでしょうねぇ?」。

 そこでまたしても、三人で爆笑。ないないない……(笑)。今日一番の妹の笑い顔だった。
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カエルのロビン

Author:カエルのロビン
フリーランスの記者&編集者。星野源と加瀬亮が好きといえばオシャレだと思っている。何歳からアラフィフか母親と協議中。数年分の旅行記と食べ歩き日記を順次アップしていきますので、よろしくお願いいたします。
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